黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
「僕ですか?
僕は少し前に三十になりました」

「へー。
六つ上なんだ……」

まだ二十代だと思っていたので、私の想定よりも少し上だ。
けれど、言われれば納得の雰囲気ではある。

「ということは、夏初さんは二十四?」

「はい。
それこそ一週間前に二十四になりました」

「えっ、大変だ!」

急に陽川さんが大きな声を出し、驚いた。

「ちょっと……十五分、十五分で戻るので待っていてくれますか?」

「はぁ……。
別にいいですが」

「じゃあ、すみません!
先に食べていていいですので!」

鞄を掴み、ばたばたと去っていく彼の背中を呆然と見送った。

「なにかお仕事でも、思い出したのかな」

ひとりになり、オードブルを摘まみながらちまちまとお酒を飲む。
そのうち、アヒージョが出てきた。

「冷めちゃうし。
先に食べていていいって言われたし」

言い訳をし、アヒージョを口に運ぶ。

「おいしー」

誰もいない目の前を見て、虚しく言葉は消えていく。

「はぁっ」

ため息をつき、バケットをオイルに浸してもそもそと食べた。
さっきまで楽しかったから、落差が凄い。

「すみません、お待たせしました」

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