黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
パスタが出てきてすぐ、陽川さんが軽く息を上げて戻ってきた。

「これ」

いきなり、目の前に小さなブーケが現れる。

「急だったんで、こんなものしか買えなくて。
本当にすみません」

申し訳なさそうに眼鏡の下で彼の眉が八の字になった。

「え……。
もしかしてわざわざ、買ってきてくれたんですか?」

「はい。
先週、誕生日だったって聞いたら、いても立ってもいられなくなりました」

ようやく座った彼が、小さく息をつく。
もしかして私を少しでも待たせないように、走ってくれたんだろうか。

「ありがとうございます」

受け取ったブーケを大事に抱きしめた。
きっと花屋の店頭で売っているできあいのブーケだろうが、それでも胸がじんと熱くなる。
元カレは私の誕生日を祝うどころか、別れを切り出したのに。

「えっ、もしかして気に入りませんでしたか?」

私が俯いて黙ってしまい、慌てて彼が聞いてくる。

「いえ。
本当に嬉しくて。
ありがとうございます」

目尻に滲んだ涙を指先で拭う。
誕生日に鳥越くんと別れたのは最悪だったが、おかげで陽川さんと出会えたからよかった。

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