黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
「ふふっ。
やはり夏初さんは素敵な女性ですね」

なぜか少しバカにされているような気がして、気分がよくない。

「ああ!
別にバカにしているとかじゃないですよ!」

そんな気配を感じ取ったのか、陽川さんは慌てて否定してきた。

「んー」

長い人差し指を一本、顎に当て、斜め上を見てしばらく考えたあと、彼が身を乗り出して私の耳もとに口を寄せてくる。

「僕、去年の年収だいたい、推定夏初さんの年収よりゼロがひとつ、多いです」

小声で話し、離れた彼はうんとひとつ頷いた。
彼がどれくらいを想定しているのかはわからないが、薄給の我が社基準でもかなりの額になる。

「だから、気にしなくていいですよ」

「……はい」

にっこりと彼が笑い、私は熱い顔で小さくなった。
だいたい、社長や御曹司が集うあのパーティにいた時点で、収入が私と同じレベルなはずがない。

私はオススメされたカクテルを、彼はグラスのスパークリングワインを頼む。
それに前菜の盛り合わせと生ハムを彼は追加した。

「ここの生ハムは絶品なんですよ。
ぜひ、夏初さんに食べていただきたくて」

そこまで言うなんてよっぽどなんだろうか。
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