黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
口に入れてまもなく、小さく声を上げて唇を手で押さえていた。
極薄の生ハムが口の中でふわりと溶けていく。
かといって味を感じられないとかではなく、ほどよい塩味と豚の脂のうまみを感じた。

「なんです?
これ」

生ハムだとわかっているが、それでも尋ねてしまう。
私が知っている生ハムとは別物だ。
といっても輸入食品を扱うコーヒー店で売っている、切り落としくらいしか食べたことがないが。

「ふふっ。
美味しいでしょう?」

なぜか陽川さんは得意げだが、うんうんと頷いていた。

「ここ、拘りの生ハムを専用のスライサーでスライスしているんです。
僕も初めて食べたとき、感動して」

生ハムを食べた彼の顔が幸せそうに緩む。
新たに頼んだワインをひとくち飲み、再び口を開いた。

「正直、この生ハムとワインさえあればなにもいらないです」

真面目な顔で言う彼がおかしくて、笑っていた。

少しお腹も落ち着き、オードブルを摘まみながら追加の料理を選ぶ。

「パスタもホホ肉の煮込みもオススメです。
あ、エビとブロッコリーのアヒージョも美味しいですよ」

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