黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
ひとりになり、オードブルを摘まみながらちまちまとお酒を飲む。
そのうち、アヒージョが出てきた。

「冷めちゃうし。
先に食べていていいって言われたし」

言い訳をし、アヒージョを口に運ぶ。

「おいしー」

誰もいない目の前を見て、虚しく言葉は消えていく。

「はぁっ」

ため息をつき、バケットをオイルに浸してもそもそと食べた。
さっきまで楽しかったから、落差が凄い。

「すみません、お待たせしました」

パスタが出てきてすぐ、陽川さんが軽く息を上げて戻ってきた。

「これ」

いきなり、目の前に小さなブーケが現れる。

「急だったんで、こんなものしか買えなくて。
本当にすみません」

申し訳なさそうに眼鏡の下で彼の眉が八の字になった。

「え……。
もしかしてわざわざ、買ってきてくれたんですか?」

「はい。
先週、誕生日だったって聞いたら、いても立ってもいられなくなりました」

ようやく座った彼が、小さく息をつく。
もしかして私を少しでも待たせないように、走ってくれたんだろうか。

「ありがとうございます」

受け取ったブーケを大事に抱きしめた。
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