黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
きっと花屋の店頭で売っているできあいのブーケだろうが、それでも胸がじんと熱くなる。
元カレは私の誕生日を祝うどころか、別れを切り出したのに。

「えっ、あっ、もしかして気に入りませんでしたか?」

私が俯いて黙ってしまい、慌てて彼が聞いてくる。

「いえ。
本当に嬉しくて。
ありがとうございます」

目尻に滲んだ涙を指先で拭う。
誕生日に鳥越くんと別れたのは最悪だったが、おかげで陽川さんと出会えたからよかった。

陽川さんも帰ってきたので、改めて自己紹介しながらゆっくりと食べる。
所属しているのは大手事務所でアメリカのロースクールに留学して資格も取り、向こうの事務所での勤務経験もあり。
ふぉぇー、凄い人なんだーって感じで私には想像がおよばない世界だ。

「え、夏初さんの勤め先ってあの会社なんですか」

私の勤務先を聞き、陽川さんが驚いた声を上げる。

「そうですけど……」

うちの会社はよくも悪くも話題になるようなことなどなにもないので、彼が驚いているのがわからない。

「もしかしてとても苦労されているんじゃないですか」

「えっと……?」

彼が気の毒そうに私をうかがう。

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