黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
彼の声は私に決断を促していた。
鳥越くんには付き合っているあいだも、別れたあとも嫌な思いをさせられた。
はっきり言ってやり返したい気持ちはある。
けれど。

「訴えるまでしなくていいです」

「本当に?」

うんと彼に、自分の意志を伝えようと力強く頷いた。
打ちひしがれている鳥越くんを見て、可哀想になった。
少しくらい、私の気持ちをわかってくれたと思いたい。

「夏初さんがいいならいいですが」

小さく息を落とした彼は、呆れているようでもあり嬉しそうでもあった。

タクシーは話してあった最寄り駅方面には向かっていたが、さらに詳しい場所を運転手に告げる。

「あの。
今日はうちに泊まるんです?」

もうそうとしか思えなくて、必死に変なものを放置していなかったか頭の中で部屋を確認した。

「え?
今日は帰りますよ」

さぞ意外そうに言われたが、なんで?

「明日」

きゅっと彼が指を絡めて私の手を握る。

「明日、休みですから一緒に買い物に行きませんか。
それでパジャマとか夏初さんのカップとか、お泊まりに必要なものを買いましょう。
どうです?」

「えっ、あっ、そぅですね」

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