黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
「まあ、同期には恵まれていませんが……?」

元カレが同期で、あのパーティに私を連れていったのも同僚だという話はした。
きっと、それだと思ったが。

「あー、守秘義務があるので詳しくは言えませんが、その」

曖昧な笑顔で彼が言葉を濁し、ぴんときた。

入社して間もない頃、会社は元社員に残業代のことで訴えられた。
毎日朝、始業時間より三十分早く来て準備をする慣例なのだが、その三十分の残業代を争ってだった。
裁判では負け、会社は蓄積した三十分の残業代を支払ったのだが。

『当たり前のことで金もらおうとかおかしいんだよ』
と、社内では訴えた元社員に冷ややかだった。

「まあ、別にそこまでは……」

あれは私もそういうものだから仕方ないと片付けている。
……でも、本当にそれでいいんだろうか。

「そうですか。
でも、なにか困ったことがあったらいつでも相談してください」

うんと頷いた彼は、私の現状に気づいているように感じた。

デザートは頼まなくても出てきた。
すでに陽川さんが私に内緒で注文していたらしい。

「うわーっ」

< 52 / 287 >

この作品をシェア

pagetop