黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
ちらりと彼の顔をうかがうとどうかしたのかと不思議そうに首が傾いた。

「……いい、ですね」

たぶん彼なら大丈夫と自分に言い聞かせる。
それに正直に言えばこんなときでなければ鯵まるごとの唐揚げなんて食べる機会なんてないから、食べたいに決まっている。

「じゃあ」

店の前に立った陽川さんと並ぶ。
店頭にはいろいろな味の、鯵の唐揚げが並んでいた。

「僕は塩にしますけど、夏初さんはどうします?」

「私はマヨネーズで」

「すみません。
塩とマヨネーズ、ひとつずつください」

支払うつもりで携帯を準備する。
けれど私が申し出る前に彼がさっと払ってしまった。

「私が払おうと思ったのに」

頬を膨らませ、鯵の唐揚げを渡してくれる陽川さんに抗議する。

「ですから、これくらい僕が……」

「私だって!
陽川さんと一緒で陽川さんになにかしたいんです!
だから次は私が払いますからね!」

「えっと……はい」

私に食ってかかられ、彼が降参だと両手を上げる。

「あー、陽川さんがリアルスパダリすぎて困る……!」

苛立ち紛れに鯵の唐揚げに噛みつく。
揚げたてのようでパリッといい音がした。
< 58 / 252 >

この作品をシェア

pagetop