黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
陽川さんのイメージだと、ドーベルマンかな。
でも、前に見た断耳していない、垂れ耳のほう。

「どうかしましたか」

「ううん、なんでもないです」

あまりにじろじろ観察していたからか彼が不審そうに振り返り、慌てて笑顔を作って誤魔化した。

部屋の前まで彼は送ってくれた。

「今日は楽しかったです。
ありがとうございました」

「僕も楽しかったです。
じゃあ、明日」

「はい、明日」

身を屈め、彼がちゅっと唇を重ねる。
ゆっくりとドアを閉め、彼が次第に見えなくなっていく。
名残惜しく小さく息をつき、音をなるべく立てないように鍵をかけた。
一拍おいて、硬い革靴の音が去っていくのが外から聞こえる。

花瓶はないので、できるだけお洒落なグラスを探してもらったブーケを挿した。

「ふふ。
嬉しいなー」

テーブルに置いたブーケに目をあわせ、顔がにやける。
気持ちが凄く、ふわふわする。
これがきっと、幸せってことなんだろうな。

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