黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
エンジン音はあまりせず、リビングにいるのではと思うほど静かだ。
微かにかかっているピアノ曲が心地よく、気づけば肩から力が抜けていた。

たわいのない話をしているうちに気づいたら車は高速に乗っていた。

「えっと……陽川、さん?
どこ、行くんですか?」

埋め立て地か海辺のショッピングモールに行くものと思っていた。
なのに高速を走っているのがわからない。

「いいところ、です」

くすりと小さく、彼が笑う。
いたずらっぽい笑みはなぜか、私の頬を僅かに上気させた。

「喉が渇いたとかトイレとか、遠慮なく言ってください。
あ、次のパーキング、寄りますね」

矢継ぎ早にしてくれた提案がありがたい。
目的地までどれくらいかかるかわからないが、お茶くらい買っておきたかった。

すぐに次のパーキングに到着し、飲み物を買って再び出発する。
天気はよく、ドライブ日和といった感じだ。

「夏初さんのご実家って、どちらなんです?」

「実家ですか?
博多です。
あー、もー、しばらく帰ってないなー」

最後に帰ったのは年末年始の休みだ。
ごぼ天うどんが恋しい。

「そうなんですね。
あまり訛っていないので気づきませんでした」

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