黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
「……ちょっと、考えさせてください」

少しくらい夢を見たいが、現実をもう知っている私には一歩を踏み出す勇気がなかった。

「いい返事を待っています」

彼の手が伸びてきて、私の手を軽くぽんぽんと叩く。
なぜかそれで、泣きそうになった。

フラッペを飲んだあと、ちょっと寄りたい店があると連れていかれたのはアクセサリーショップで、陽川さんのイメージからは遠い。

「あの、ですね」

ショーケースの中の指環を見ながら、彼が言いにくそうに口を開く。

「他の男から夏初さんへ視線を向けられるのが嫌なんです。
だからせめて、僕のものだって印をつけていただけないかなーって」

顔を上げた彼が情けない顔でふにゃんと笑う。
破壊力抜群なその笑顔のせいで、私はショーケースに手をついて崩れ落ちていた。

「えっ、夏初さん!?
大丈夫ですか!
そんなに嫌なんですか!?」

彼は引かれたのではないかと恐れつつ私を心配してくれているが、そうではない。

「だ、大丈夫です」

手を借りて、よろよろと立ち上がる。

「いいですよ、指環くらい」

あんなに可愛くお願いされたら断るなんて選択肢はどこにもない。
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