黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
けれど鯵の唐揚げすら買わせてもらえないなんて、不満だ。

「ふふっ。
ふふふっ」

隣から笑い声が聞こえてきて見上げる。
陽川さんはまたおかしそうに笑っていた。
もう、本日の定番と言っていいと思う。

「夏初さんは本当に面白いですね」

なぜか彼は嬉しそうで、理解に苦しむ。

「わかりました、次は夏初さんに買ってもらいます。
で、次はなに食べます?
しょっぱいものを食べたのでソフトクリームとかいかがですか」

眩しそうに目を細め、彼は私の口端についていたカスを払った。

「あー、そうで……」

耐えられなくなって熱い顔で目を逸らす。
けれどそこまで言って、止まった。

……〝次〟とはまだ食べる宣言と一緒だったのでは?

そろりと陽川さんの顔をうかがうが、彼が気にしている様子はない。

「陽川さんは」

「はい?」

眼鏡の向こうで大きく何度か瞬きし、彼が私を見る。

「いっぱい食べる私が可愛くないとか言わないんですか……?」

つい、縋るように彼の腕を掴んでいた。
元カレの鳥越くんにはよく、女のくせに食べすぎってバカにされた。
< 68 / 287 >

この作品をシェア

pagetop