黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
陽川さんが軽く指さした先には女子の憧れる、ルームウェアのお店があった。
私も大学生時代に奮発して買った一枚があるが、もう毛玉だらけでくたびれている。

「ほら、行きましょう」

「え、でも」

欲しいけれど気軽に買える値段じゃないのも知っている。
私が躊躇っていると陽川さんは足を止め、斜め上を見てなにやら考えはじめた。

「そうですね。
僕は欲しいものが買えて喜んでいる夏初さんを見るのが幸せなので。
夏初さんの笑顔への投資はプライスレスです」

少しして視線を戻した彼が有無を言わさない顔でにっこりと笑う。

「はぁ……?」

「なのでほら、行きましょう」

再び彼が私の手を引き、店へ向かっていく。
謎理論を理解できないでいるうちにお店に入っていた。

「夏初さんはどれが欲しいです?
もこもこのパーカーとか可愛くて似合うんじゃないですか」

陽川さんに声をかけられ、思考が目の前へと戻ってくる。
なんだかよくわからないが、彼は楽しそうだからこれでいいのだと自分を納得させた。

アウトレット価格だったので買うと言ったが、「僕の部屋で過ごすためのものなので」
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