黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
「そう、ですね。
経済を回すのは大事なことですもんね」

「はい。
じゃあ、そういうことで」

上機嫌に彼がアクセルを踏む。
本当に陽川さんはスパダリすぎて困る。
それによく考えればいまさらキャンセルしてもキャンセル料は全額負担だし、旅館にも迷惑をかける。
だから、これでいいのだ。

到着したのは高級感のある宿だった。

「……陽川さん。
ここ、お高いんじゃないですか?」

チェックインの手続きをしている彼に、こっそり耳打ちをする。
私など場違いな気がしてどきどきしてしまう。

「お客様からのご紹介なので大丈夫ですよ」

「……はい」

にっこりと笑った彼はこれ以上なにも聞くなという空気を醸し出していて、口を噤むしかなかった。

通された部屋も高級そうだったが、もうなにも考えないとも。

「先にお風呂、いかがですか」

「そうですね……」

ちらりと向けた先には露天風呂があるが、リビングからは丸見えだ。
あんなお風呂、入れるわけがない。

「えっと。
大浴場、行ってきます」

曖昧に笑って回避しようと試みる。

「僕もそうしようかな」

陽川さんはさらに勧めたりせずあっさりしていて、ほっとした。

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