黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
「知人に連れてこられて……」

ちらりと遠くで数人の男と話している篠木さんに目を向ける。
視線があい、彼女は意味深にひらひらと手を振った。

「ああ。
ああいうのが友人だと大変だね」

男はさも、自分は理解があるように言うが、ここにいる時点で大差はないのではないかと思う。
それに彼女は同僚ではあるが友人ではない。

「自己紹介がまだだったね。
オレは鹿野谷(かのや)
弁護士をしている」

弁護士バッチを見せつけるように、彼が胸を張る。

「まあ、今はオヤジの事務所に所属してるけどね」

にやりと彼は、イヤラシく頬を歪めた。

「で」

にこにこ笑いながら彼が私の顔を見てくるが、少しのあいだ考えてようやく自己紹介をしろと言われているのだと気づいた。

「あー、夜桜、です。
ただの会社員、です」

適当な笑みを浮かべ、当たり障りのない自己紹介をする。

「下の名前は?」

「……夏初(なつは)、です」

「夏初ちゃん」

初対面の男に名前を、しかも〝ちゃん〟付けで呼ばれ、背筋がぞわりとした。

「夏初……夜桜なのに夏なの?」

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