黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
鼻を啜って涙を誤魔化し、わざと茶化すように言う。
裏口は最後に帰る人が施錠するようになっているから、きっと開いていたのだろう。
それでも勝手に会社に入るのはいかがなものかと思う。

「大丈夫、緊急避難だからな。
もし夏初になにかあったらどうしようって不安でしょうがなかった」

真面目な顔で彼が頷く。

「……連絡もしないでごめんなさい。
携帯、取り上げられていて」

「だから。
夏初が謝る必要はない。
それよりもう、帰ろう。
何時だと思ってる?」

言われて壁に掛かっている時計を見るともうすぐ終電が出る時間だった。
こんな時間になっているなんて思わない。
晴貴さんも心配するはずだ。

「でも、仕事がおわら、なく、て」

課長から帰り際に追加され、今日の仕事はまだ半分も終わっていない。

「それはもう、やらなくていい」

「でも」

終わらせなければまた責められる。
私にかかった疑いも晴れない。

「大丈夫だ」

優しく微笑み、彼が両手で私の顔を包む。

「僕を誰だと思ってる?
弁護士だぞ?
こういうのは僕の仕事だ」

レンズ越しに目をあわせ、彼がうんと頷く。

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