黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
「でも、こんな個人的なお願い」

「夏初はもう、僕にとって大事な人だよ。
夏初の問題は僕の問題だ。
だから、気にしなくていい」

「……うん」

あやすように額に口づけを落とされ、ようやく一日張り詰めていた気が抜けた。

晴貴さんが待たせてあったタクシーで帰る。

「今日は僕の家に泊まるだろ?
そのほうが僕も安心だ」

「そう、ですね。
そう、します」

指を絡めてぎゅっと強く、彼が私の手を握ってくれてほっとする。

「鳥越が連絡くれたんだ。
夏初になんかあって自分のせいにされても困るからって。
渡しておくもんだな、名刺」

おかしそうに彼は笑っているが、おかげで晴貴さんが来てくれた。

「ちょっとだけ鳥越くんに感謝ですね」

「そうだな。
夏初にした無礼は許さないが」

そこまで根に持たないでもとも思うが、嬉しくないのかといえば嬉しいからいい。

食欲はあるかと聞かれたがなにも食べる気になれなくて、彼のマンションに直接向かってもらった。

「明日からの相談をしよう」

ソファーに座り、晴貴さんは身体を斜めにして私と向きあった。

「これは僕の希望だが。
もうあの会社は辞めてほしい」
< 91 / 252 >

この作品をシェア

pagetop