黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
「少し前に会計があわないことがわかり、内定していたのだ」

うんうんと役員の皆さんは頷いているが、それでこれが届いたので犯人は私とはあまりに短絡すぎないだろうか。

「君がやったのだろう?
正直に今言えば、刑事事件にはしないでおいてやる」

まるで恩に着せるような言い方でむっとした。

「私はやっていません」

「しらを切るのか!
ここに証拠があるだろ、証拠が!」

専務が指先でつついたのは先ほど私も見たあの告発文の紙で、あれを証拠と言われても困る。

「そんな怪しげなものを信じるんですか」

「君には発言を許していない!」

すぐに副社長の鋭い声が飛ぶ。
査問会は一方的に役員たちで糾弾し、ターゲットを疲弊させて罪を認めさせるものだと聞いている。
本当にやったのならそれでもいいが、私は無罪だ。
絶対に屈したりするものか。

「君の勤務態度だが」

場を落ち着かせるように咳払いし、副社長が営業部長に目配せする。

「はい。
夜桜夏初の勤務態度ですが……」

それからは延々、私の小さなミスを部長に読み上げられた。
印鑑が上司に向かってきっちり45度斜めじゃなかったとか。
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