黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
一瞬、息を詰まらせてしばらく私を見下ろしたあと、鳥越くんは諦めたかのごとく長く息を吐きだした。

「絶対にオレが教えたって言うなよ」

「うん」

それでも少しのあいだ逡巡し、彼が重い口を開く。

「金曜の合コンで先輩が、オレらの同期がどうもやらかしてるらしいって言ってた。
それであの文書だからオマエのことだったのかと思ったんだけど」

「酷い」

つい口をついて抗議が出てくる。
仮にも元カノを使い込み犯と思うなんてやっぱり、別れてよかった。

「わ、悪い!
でも、同期って五人しかいないだろ?
あ、オレは断じてやってないからな!」

「わかった、わかった、信じるよ」

必死で否定する彼におざなりに返事をする。
まあ少しは疑っていたがこんな大それたことができる人ではないし、もし使い込みをして大金が手に入っていたら金遣いが荒くなってすぐバレるからありえない。

「うん、教えてくれてありがとう」

「べ、別にオマエのためじゃねーし。
オマエになんかしたらまたあの弁護士に訴えるとかぜってー言われるし。
そ、それだけだからな!」

少し赤い顔で鳥越くんが捲し立てる。
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