黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
何時かはわからないが、体感で確実に遅刻な時間な気がする。
いや、晴貴さんがいるということはそうでもないのか?

「夏初はしばらくお休みだ。
僕は午前、半休取った」

「でも会社……」

私物も置いてあるし、退職の手続きもなにもしていない。
このまま辞めていいはずがない。

「手続きは全部、僕に任せておけ。
あとで会社に行って、私物も引き上げてくる」

彼はさも当然といった感じだが、そこまで甘えていいのだろうか。

「あの。
本当にいいんですか?
その、……依頼料、とか」

洗面所へ向かおうとする彼のパジャマをそっと摘まむ。
彼の好意に甘えてタダで全部やってもらうわけにはいかない。
かといって依頼料を払えるかといえば自信がなかった。

「だから。
夏初は僕の大事な……」

そこまで言って止まり、彼はがしがしと後ろ頭を掻いた。

「わかった。
依頼料だな」

彼を見上げ、うんうんと勢いよく頷く。

「夏初の手料理が食べたい。
ごはん作って」

彼はもうそれで決まりだという感じだけれど。

「本当にそれでいいんですか?
依頼料ってもっと高いんじゃ……」

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