黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
出るなと言われたので仕方なく、社食へ向かう。

「……あれが例の」

「……おとなしそうな顔してやるよな」

そこかしこから私をうかがう話し声が聞こえ、食欲を奪っていく。

「勘弁してよ……」

この状態がしばらく続くのかと思うと今すぐ会社を辞めたくなったが、それこそ敵の思うつぼだ。
役員たちが敵ならば、だが。

食事を諦め、立とうとしたところで目の前に篠木さんが座った。

「会社のお金使い込むなんて、やるわね夜桜」

わざとらしく大きな声を出す彼女にげんなりしてすぐにでもこの場を去りたくなったが、かろうじて耐えた。
きっと今、無視したり逃げたりするとないことばかり吹聴される。

「篠木さんも私のこと、疑ってるんだ?」

「んー、別にー?」

無関心そうに言い、彼女は大きな口を開けてコロッケを頬張った。
箸を握る指の爪は先週と違うデザインになっていて……ちょっと待って。

彼女は頻繁に、しかも凝ったデコネイルに変えている。

美容室には半月ごとに通い、別メニューのトリートメントもしていると言っていた。

まつエクは芸能人も通う一流サロンでやっていると自慢していた。

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