復讐のために近づいたのに、冷徹御曹司の溺愛から逃れられない
私はそっと彼を引き離すと、目を潤わせた。

「……一夜だけじゃ、なかったんですか?」

そう言うと彼は、私の額にキスをした。

「そう思えれば、楽だったんだがな」

そして社長の椅子に座ると、午後の稟議書にサインをし始めた。

さっきまであんなに、情熱的だったと言うのに、もう冷静になっている。

私も冷静にならなければ。

彼に背中を見せて、自分のデスクに戻る。

差し出された資料を見ると、大事なポイントが青色のボールペンで書かれていた。

その整った字に、彼の性格が現れているような気がした。

パソコンに向かって、会議資料を使いながら、ポイントをまとめていく。

思えば兄もこうして、会議資料をブラッシュアップしていった。
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