復讐のために近づいたのに、冷徹御曹司の溺愛から逃れられない
お互いに笑い合うと、彼は私を抱き寄せた。

「好きだって、言ってくれたね」

「……はい」

よくもそんな事が言えたものだ。

自分の演技に捨てたものじゃないなと思う。

「俺も、詩織さんに……惹かれている」

彼はぎゅっと、私を抱きしめた。

「嬉しい……」

彼はどんな表情をして、私の言葉を聞いているのだろう。

「詩織。今夜、一緒にいないか?」

息が止まった気がした。

「はい。喜んで」

「今夜は、美味しいモノを食べて、美味しいお酒を飲んで」

彼は私をそっと見つめた。

「詩織も食べつくしたいよ」

「ふふふ……」

そして私は思った。

この男を私の虜にして、滅茶苦茶にしてやる。

婚約も切り裂いて、この会社もボロボロにしてやる。

―――それがこの男への復讐なのだと。
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