黒魔術の使い手ですが何か?! 〜死に戻り王太子妃は今世ではもふもふ精霊と一緒に楽しく暮らしたい

エピローグ

「イヴァン!もっと腰を落とすんだ!」

「はい。父上」

オーロラが語った前世で生まれたという息子が、どうやら今世では早めに生まれたようだ。
新婚そうそう毎日愛し合っていたのだから当然といえば当然だが、前世より五年ほど早く生を受けた。

髪の色と瞳の色はウォルターそのもの。そして顔立ちはオーロラにそっくりである。

その後も次々と子は生まれ、イヴァンが五歳になった今、すでに下にふたりの弟と妹が生まれている。

オーロラは前世で死を迎えた歳を先日通り越した。
と同時に、国王陛下が引退され、今ウォルターは国王、オーロラは王妃として国を治めている。

前国王は郊外に建てた別宮で母とともに余生を過ごすことにしたようで今はふたり穏やかに暮らしている。

そして王宮の稽古場ではイヴァンと剣術の稽古中だ。なかなか腕がいい。いい剣士になりそうである。

「父上、お願いします!」

五歳なのに熱心で驚く。
この頃の自分を振り返ってもここまで熱心に取り組めはしなかった。
ウォルターが何事にも熱心に取り組めるようになったのはオーロラと出会ってから。
彼女との出会いはウォルターに変化をもたらした。
彼女とまた出会った時に強い男になっているために毎日必死で生きるようになった。
剣術も勉強も全部がんばった。
そしてオーロラが助けてくれたあの魔術について調べた。

ぱしっと木刀を払って、イヴァンが土に手をついたので、ウォルターはここまでと決めた。

「よし。本日はここまで。また来週まできばるのだぞ」

「はいっ」

「今日は母上がお茶を用意してくれているらしいのだ。行こうか」

イヴァンの手をひき、王妃宮に行くと、オーロラが庭にお茶を用意してくれている。
イヴァンの下に産まれたふたりの王女と王子はまだ三歳と一歳であり、三歳の王女は庭を走り回っている。庭は今デイジーの花が満開。
春まっさかりである。

「おかあさまぁ。花を摘んでもいい?」

「ベラ。いいわよ」

「わーい」

王女の名はオーロラの実の母の名をとってベラと名付けた。
彼女はイヴァンを産んでからはじめて実母を王宮に呼び、ひそかに交流を持った。
今もパン屋は大盛況で毎日忙しいという。

「オーロラ。お茶の用意が出来ているようだね」

「あ、殿下」

ぱあっと顔を輝かせる。
赤い髪と金色の瞳が本当にデイジーみたいだ。
ずっと出会った頃からそう思っていた。
とてもきれいな色合いだと思う。

「ルヴィエのお茶をいただいたもので。エリオット殿下から届きました。あと、こちらがルミエール皇后からの東洋のあずきという赤い豆を使ったおやつらしいですわ」

「ほう。あずきとはなんだろう?」

エリオットは許嫁と結婚し、ルミエールは東の帝国へ嫁いだ。今は皇后となっている。

「そういえばシーヴァ公子がこれを持ってきたぞ。エンジェル嬢が戻ってきているから三日後に一緒に来るらしい」

「まぁそうなのですね」

エンジェルは夜会で見つけた伯爵令息と友人関係を経た後、令息の根気ある求婚により伯爵家に嫁いでおり、先日子どもが生まれたところだ。
シーヴァはさんざん迷った挙句、先日ようやくルヴィエ王国の公爵令嬢を迎えた。
長く探したおかげで相当馬が合うのかかなりの仲の良さらしい。

「そういえば、イヴァンの症状ですけれど、ミシェルに見てもらおうと思うのですがどう思われますか?」

「そうだった。ミシェルを今日呼んだのだ。もう着くころだが……」

ミシェルは今もクロドの街にいる。グラントをとらえてから、あの街を一掃したので、もう今はにぎわいのある下町になっているが、そこで診療所を開いているのだ。
ミシェルの母はキノックス領で相変わらず元気にやっているので、母親と連絡をとりながらあの街で腕のいい医師として手腕をふるっている。

王宮で王宮医にならないかと誘ってみたが、ウォルターとオーロラの夫婦仲を見せつけられるのはごめんだと言われた。
もちろん気づいていた。彼の気持ちには。
ミシェルのほうがオーロラを早く知っていたことを思うと今も嫉妬心が芽生える。
だが、そのミシェルにですら絶対にオーロラは渡せないと思ったのだ。

ここで開業すると言い張ったので、ときどき王宮にも顔を見せることを条件に許した。
放っておけば全然顔を見せないのでひと月に一回ほどはこちらから呼びつけるようにしている。
今日は呼びつける目的もあったがイヴァンを見てもらおうと思ったのだ。
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