秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
「愛果さん」

執務室に呼ばれたのは、定時を少し過ぎた頃だった。

「はい」

いつもと同じように返事をして、中に入る。

けれど、空気が少し違う気がした。

「座ってくれ」

「……失礼します」

デスクの向かいに腰を下ろすと、社長はしばらく何も言わなかった。

静かな沈黙。それだけで、胸がざわつく。

(何だろう……)

仕事の話にしては、妙に重い。

「今日のスケジュールに問題はありませんでした」

とりあえず口を開くと、

「それは分かっている」

短く遮られた。

「今日は、別の話だ」

その一言で、鼓動が強くなる。

視線を上げると、司はまっすぐこちらを見ていた。

逃げ場のない、視線。

「……しばらくしたら」

低く、落ち着いた声。

「婚約するかもしれない」
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