秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています

第2章 誕生日の一夜

仕事を終えて、会社を出る。

いつもと同じ帰り道。

街の灯りが、やけに明るく感じる。

(今日は……誕生日、か)

スマートフォンに表示された日付を見て、苦笑する。

祝う相手もいないし、特別な予定もない。

最初から、一人で過ごすつもりだった。

コンビニに立ち寄って、小さなケーキとチューハイを買う。

それくらいで、十分だと思った。

(これでいい)

そう言い聞かせる。

あの人のことを考えなくて済む夜なら、それでいい。

――社長。久遠司の顔が、ふと浮かぶ。

「婚約するかもしれない」

あの言葉が、何度も胸の中で繰り返される。

(考えないって決めたのに)

小さく息を吐いて、歩き出す。

部屋に戻ると、静寂が迎えてくれた。

電気をつけて、靴を脱ぐ。

いつも通りの、何も変わらない空間。
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