秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
(お疲れさま、私)

誰に言うでもなく、心の中で呟く。

テーブルにケーキを置いて、袋から取り出す。

小さなショートケーキ。ろうそくなんて、もちろんない。

「……ふふ」

思わず笑ってしまう。

こんな誕生日、いつ以来だろう。

(まあ、いいか)

フォークを手に取った、そのとき。

――ピロン。スマートフォンが震えた。

画面を見る。表示された名前に、心臓が強く跳ねた。

『久遠司』

「……え?」

一瞬、息が止まる。どうして、こんな時間に。

震える指で、メッセージを開く。

『今、時間はあるか』

短い一文。それだけなのに、胸がざわつく。

(どうして……)

返信しようとして、指が止まる。

今日は、誕生日。そして、一人で過ごすはずだった夜。

もう、関わらないと決めたはずなのに。
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