秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
(でも……)

断る理由も、見つからない。いや、本当は分かっている。

――断りたくない。

『あります』

気づけば、そう返していた。すぐに既読がつく。

『来られるか』

続けて送られてきたメッセージ。

場所は書かれていない。それでも、意味は分かる。

(社長室……?)

この時間に呼ばれる理由なんて、ひとつしか思いつかない。

仕事。そう、きっと仕事だ。

「……行くしか、ないよね」

小さく呟いて、コートを手に取る。

玄関を出ると、夜の空気が少し冷たい。

さっきまでの静かな時間が、嘘みたいに消えていく。

(どうして、今日なんだろう)

足早に歩きながら、何度も考える。

誕生日だなんて、伝えたことはない。

知っているはずもない。それなのに。

(なんで……呼ぶの)

胸の奥が、期待と不安で揺れる。
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