秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
「……はい」

有無を言わせない声音。

それ以上、逆らうことはできなかった。

――どうして、こんなことを。

部屋を出ながら、胸の奥がざわつく。

社長は、誰に対しても公平で冷静だ。

特定の誰かを気にかけるような人じゃない。

それなのに。

「戻りました」

五分後、コーヒーとサンドイッチを手にして社長室に戻ると、社長は視線を上げた。

「食べながらでいい。報告を続けろ」

「……ここで、ですか?」

「問題あるか?」

「いえ……」

戸惑いながら、デスクの端に立つ。

「午前の会議資料ですが――」

言葉を続けながら、サンドイッチを一口。その瞬間。

「無理に詰め込むな」

低い声が落ちてくる。

「ゆっくり食べろ」

「……すみません」
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