秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
「謝るな。仕事は逃げない」

さらりと言われて、胸が詰まる。

こんな優しさ、知らない。

「社長」

思わず口にしていた。

「なぜ、そこまで……」

「何がだ」

「私に、そこまで気を遣っていただく理由が」

言ってしまってから、しまったと思う。

けれど社長は、少しだけ視線を上げた。

「秘書の体調管理は、業務の一環だ」

「……それだけ、ですか?」

「それ以上の理由が必要か?」

淡々とした返答。

いつもと同じはずなのに、なぜか距離が近い気がする。

「いえ……ありがとうございます」

「礼はいらないよ」

短く言って、再び書類に目を落とす。

その横顔は、やはり完璧で――でも、どこかだけ違う。

「午後の予定は?」

「はい。外部との打ち合わせが二件――」

「同行してほしい」
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