秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
「来たか」

低い声に、胸が跳ねる。

「はい……」

扉を閉めて一歩進むと、司が静かに立ち上がった。

そのまま、距離が近づく。

普段ならデスク越しに話すはずなのに――今日は違う。

「……誕生日だって聞いた。おめでとう」

「え……?」

思わず顔を上げる。

その手にあったのは、小さなショートケーキ。

白い箱に、一本のロウソクが添えられている。

「どうして……」

言葉がうまく出てこない。

誰にも言っていないはずの、私の誕生日。

「秘書の情報は把握している」

淡々とした答え。それなのに――

「……ありがとう、ございます」

胸の奥が、じんわりと熱くなる。

「火、つけるか」

「いえ、そんな……」

「いいから」

短く言われて、断れない。

小さな炎が灯る。
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