秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
揺れる光が、二人の間を照らす。

「消して」

「……はい」

そっと息を吹きかける。

ふっと消えた瞬間、なぜか胸が締めつけられた。

「願い事は?」

「していません」

「そうか」

それだけの会話なのに、距離が近い。

手が届きそうなほどの位置。

「……どうした」

「え?」

「顔が、濡れている」

言われて気づく。頬を伝う、温かいもの。

「……あ……」

慌てて拭おうとした手を、そっと掴まれる。

「無理に隠すな」

低い声。その優しさが、余計に苦しい。

「……迷惑だったか?」

「いいえ」

首を振る。

「嬉しい、です」

本心だった。こんなふうに祝われるなんて、思ってもいなかった。

「ただ……」

言葉が詰まる。

(どうして、こんなことするの)

婚約の話をしたばかりなのに。
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