秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
その声に、期待してしまいそうになる自分を必死に押さえる。

(だめ……)

これは、叶わない恋。

だからこそ――終わらせなきゃいけない。

「ですから……」

息を吸う。

「抱いて下さい」

一瞬、時間が止まった。

「……愛果さん?」

信じられないものを見るような視線。

それでも、逸らさない。

「一度でいいんです」

震える声を、必死に繋ぐ。

「これで……終わりにしますから」

言い切った瞬間、胸が強く痛んだ。

終わりにするための、一夜。そう決めたはずなのに。

「本気で言っているのか」

低い声が落ちる。

「はい」

迷いはない。いや――迷っていたら、言えない。

「後悔するぞ」

「しません」

即答だった。

「後悔するくらいなら……何もないまま終わる方が、ずっとつらいです」
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