秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
ぎゅっと、しがみつくように。

「……いいのか」

「はい」

迷いはなかった。

いや、迷いなんて、とっくに越えている。

(この人に触れてほしい)

ただ、それだけだった。

「……愛果」

その声が、いつもよりも近くて、熱を帯びている。

次に落ちてきた口づけは、もう優しさだけじゃなかった。

抑えていた何かが、あふれ出すように。

触れられるたびに、息が乱れる。

心も体も、全部持っていかれるみたいに。

(こんな顔、見せたことない……)

知らない自分になっていく。

でも、怖くない。むしろ――

(離れたくない)

そう思ってしまう。

社長の腕が、逃がさないように強く抱き寄せる。

その力に、すべてを委ねた。

(これで終わりのはずなのに……)

そう思いながらも私はもう、自分を止められなかった。
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