秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
「……社長、です」

「なら問題ないな」

当然のように言われて、言葉に詰まる。

「だが」

そのまま、少しだけ身を寄せられる。

「おまえは考えすぎだ」

低く、耳元で囁かれる。思わず息が止まる。

「俺が必要だと言っている。それでいい」

その言葉が、胸の奥に深く落ちる。

(……そんな言い方)

ただの業務命令のはずなのに。

それ以上の意味を感じてしまう。

エレベーターが止まり、扉が開く。

「行くぞ」

先に歩き出す背中。

私は一瞬だけ立ち尽くしてから、慌てて後を追った。

(これ、仕事だよね……?)

そう思いながらも胸の鼓動だけが、どうしても落ち着かなかった。
< 33 / 60 >

この作品をシェア

pagetop