秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
周囲から見れば、きっと――

(秘書、には見えないよね……)

そんな距離。そんな空気。

「何を考えている」

低い声に、はっとする。

「いえ……」

「顔に出ている」

視線が絡む。逃げられない。

「……距離が、近いなと」

思わず本音がこぼれる。

社長の目が、わずかに細められる。

「不満か」

「違います」

慌てて首を振る。

「ただ……慣れなくて」

正直な気持ちだった。

こんなふうに、誰かとずっと一緒にいるなんて。

まして、それが――

「慣れろ」

短く言われる。

「これからも、同じだ」

その言葉に、心臓が大きく跳ねる。

(これからも……?)

問い返したいのに、声が出ない。

「愛果」

名前を呼ばれて、視線が引き寄せられる。
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