秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
「何をしている」

「……休憩に」

平静を装って答える。

けれど、きっと顔に出ている。

「そうか」

短く返される。そのまま、こちらに歩み寄ってくる。

周囲の視線が、一斉に集まるのが分かる。

(やめて……)

こんなところで。

これ以上、見せつけるみたいなことは――

「行くぞ」

当たり前のように、声をかけられる。

「……はい」

逆らえない。そのまま隣に並ぶ。

距離が、近い。あえて離れることもできず、そのまま歩き出す。

背中に、いくつもの視線を感じながら。

(もう……噂になってる)

分かっていたのに。止められなかった。

(それでも……)

隣にいるこの人から、離れることだけは――

どうしても、できなかった。
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