秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
会議室の空気は、いつも以上に張り詰めていた。

「最近、社長」

部長の一人が口を開く。

「秘書に夢中になっていて、業務がおろそかになっているとか」

一瞬、心臓が止まった気がした。

(……やめて)

視線が、一斉にこちらへ向く。

「外出も同行が増えていますし、効率的とは言えません」

「秘書は他の人に任せた方がいいのでは?」

淡々とした指摘。正論だった。

何も言い返せない。

(……やっぱり)

こうなることは、分かっていた。

それでも――

「いえ」

静かな声が、空気を切り裂く。

「俺は大丈夫です」

社長の声だった。

思わず、顔を上げる。

「業務に支障は出ていない」

冷静な口調。けれど、はっきりとした意思がそこにある。

「しかし――」

「問題ありません」
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