秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
(私が選んだこと……)

分かっている。それでも。

「……どうしたらいいの」

ぽつりと零れた声は、誰にも届かない。

静かな部屋の中で、不安だけが膨らんでいく。

私はただ、一人でその可能性を抱え込むしかなかった。

ドラッグストアの前で、足が止まった。

自動ドアが開いて、また閉まる。

何度もそれを繰り返しているのに――中に入ることができない。

(……買わなきゃ)

分かっている。確かめないと、前に進めない。

それなのに。

(もし……)

一歩踏み出そうとした瞬間、体が強張る。

――陽性だったら。

その未来を想像しただけで、息が詰まる。

「……無理」

小さく呟いて、視線を逸らす。

店内には、普通に買い物をしている人たち。

日用品を選んで、レジに並んで――
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