秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
気づいたのは、ほんの些細な瞬間だった。

社長の声に、胸が少しだけ跳ねる。

名前を呼ばれるたびに、呼吸が乱れる。

視線が合うだけで、なぜか目を逸らしたくなる。

――ああ、そうか。

これは、もう“尊敬”じゃない。

ずっと、そう思い込んでいただけだった。

仕事ができて、冷静で、誰よりも信頼できる人。

だから憧れているのだと、そう言い聞かせてきた。

でも違う。こんなふうに、心が揺れる理由はひとつしかない。

(私、社長のこと……)

そこまで考えて、そっと唇を噛む。

言葉にしてしまえば、終わってしまう気がした。

社長と私は、ただの上司と秘書。

それ以上でも、それ以下でもない。

この距離だからこそ、そばにいられる。

「愛果さん、どうした?」
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