秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
不意に声をかけられて、顔を上げる。

「いえ、何でもありません」

いつも通りに微笑んで、何事もなかったように振る舞う。

それが、私にできる精一杯だった。

(好き、なんて……言えるわけない)

胸の奥にしまい込んだ想いは、静かに熱を持ったまま、行き場を失っていた。

ある日、書類を抱えてコピー機に向かおうとしたとき、声をかけられた。

「それ、俺がやりますよ」

「大丈夫ですよ、自分の仕事なので」

振り返ると、営業部の村田さんがにこりと笑う。

「いやいや、秘書課って忙しいでしょ。これくらい手伝わせてください」

「ありがとうございます。でも――」

「いいからいいから」

軽く書類を取られてしまい、思わず苦笑する。

「じゃあ、お願いします」
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