秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
どちらにしても、もう元には戻れない。

その事実が、怖い。

「……っ」

気づけば、手が震えていた。

握りしめても、止まらない。

足も、前に出ない。

(どうしよう……)

何度も同じ言葉が頭を巡る。

答えなんて、出ないのに。

そのまま、ドラッグストアの前に立ち尽くす。

人が通り過ぎていく。

時間だけが、無情に進んでいく。

「……やだ」

ぽつりと、声が漏れる。

怖い。確かめるのが、怖い。

でも――確かめないままでも、怖い。

どうすればいいのか、分からない。

頬に、温かいものが伝う。

「……なんで……」

涙が止まらない。

こんなところで泣くなんて、思ってもいなかった。

それでも、止められない。

「……どうしたらいいの……」

誰にも聞こえない声。

答えてくれる人も、いない。

私はただ、一人で――その恐怖に、飲み込まれていた。
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