秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
怖い。でも、それ以上に。

(このままじゃ……全部壊れる)

仕事も。立場も。そして――自分自身も。

「……終わりにしなきゃ」

小さく呟く。それしか、守る方法がない。

あの人の側にいれば、きっとまた流される。

優しさに甘えて、離れられなくなる。

でも――それは、いけないことだ。

(好きだからこそ……)

このまま続けるわけにはいかない。

ぎゅっと拳を握る。

指先が震えるのを、無理やり止める。

「……明日、言おう」

決めた。どれだけ苦しくても。

どれだけ後悔しても、言わなきゃいけない。

翌日。

いつもと同じように出社して、いつもと同じように仕事をこなす。

何も変わらないふりをして。

でも、心の中はぐちゃぐちゃだった。

「愛果」

呼ばれて、顔を上げる。

そこにいるのは、いつも通りの社長。
< 52 / 90 >

この作品をシェア

pagetop