秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
「……資格がないなんて」

否定された瞬間、視界が揺れた。

「そんなことはない――」

言葉の続きを聞く前に、ふっと力が抜ける。

「……あ」

次の瞬間、体がぐらりと傾いた。

「愛果!」

腕を引かれて、そのままソファに横たえられる。

「しっかりしろ」

低い声が、すぐ近くで響く。

「……大丈夫、です」

そう言おうとしたのに、声がうまく出ない。

「顔色が悪い」

額に触れられる。

その温もりに、張り詰めていたものが一気に崩れた。

「珍しいな」

社長の声が、少しだけ柔らぐ。

「どんなに顔色が悪くても、倒れなかったおまえが」

その言葉に、胸が締めつけられる。

(……もう無理)

隠し通せない。このまま、嘘を重ねることなんてできない。
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