秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
トイレに行き、震える手で結果を確認する。

視界が滲んで、何度も見直す。

(……出てない)

線は、ひとつだけ。

「……よかった……」

その瞬間、全身の力が抜けた。

「よかったです……社長っ」

振り返ると、すぐ後ろに社長が立っていた。

「そうか」

短く返される。

その一言に、胸の奥がじんわりと温かくなる。

怖かった。ずっと、一人で抱えていた不安。

全部が一気にほどけていく。

「……すみません」

涙が止まらないまま、そう言うと。

「謝るな」

低く否定される。

「無事なら、それでいい」

その言葉に、また涙がこぼれる。

(終わると思ってた……)

これで、すべて終わるはずだった。

距離も、関係も、気持ちも。

なのに――

「俺は、少し残念な気もするけどな」
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