秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
ぽつりと落ちた一言に、思考が止まる。

「……え?」

顔を上げる。

司はいつもの無表情のまま、こちらを見ていた。

「……どういう、意味ですか」

声が震える。冗談とは思えない。

でも、本気とも思えない。

「そのままの意味だ」

淡々とした答え。

「お前との子どもなら、悪くないと思った」

息が、止まる。

(……そんなこと)

言っていいはずがない。

婚約者がいる人が、こんなふうに。

それなのに。胸の奥が、強く揺れる。

「でも……」

言葉を探す。現実を、引き戻すために。

「社長には、婚約者が……」

その瞬間。

「関係ない」

はっきりと言い切られる。

逃げ場を断つように。

「最初から、そんなものに縛られるつもりはない」

視線が、真っ直ぐに刺さる。
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