秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています

第5章 婚約者と逆転

「本日、来客の予定は――」

朝のスケジュールを確認しながら、私はいつも通りの声で報告を始めた。

その時だった。

「社長のご婚約者様がお見えです」

受付からの内線。一瞬で、空気が変わった。

(……来た)

胸の奥が、きゅっと締めつけられる。

「通せ」

社長は迷いなく答える。その声は、いつも通り冷静で――

でも、どこか張り詰めているようにも聞こえた。

「……失礼いたします」

ドアが開く。

そして、入ってきた女性を見た瞬間――息が止まった。

(綺麗……)

それしか、言葉が出てこない。

完璧な立ち姿。無駄のない所作。

柔らかく微笑むその表情すら、計算され尽くしているように美しい。

「初めまして。久遠様の婚約者の、桐島玲華と申します」

凛とした声。一歩近づくだけで、空気が変わる。
< 61 / 90 >

この作品をシェア

pagetop