秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
(これが……婚約者)

自分とはまるで違う存在。

隣に立つのが当然だと、誰もが思うような人。

「久遠です」

社長が短く答える。その距離が、妙に遠く感じる。

「突然の訪問、失礼いたしました」

玲華さんは軽く頭を下げる。

その動きひとつさえ、絵になる。

「少し、お話ししたいことがありまして」

「構いません」

淡々としたやりとり。

その間に、私はただ立っていることしかできなかった。

「……あなたが秘書の方?」

不意に、視線が向けられる。

「はい。真島愛果と申します」

なんとか声を出す。

「いつも久遠様がお世話になっております」

柔らかな微笑み。

でもその奥に、何かが潜んでいる気がした。

(……見られてる)

値踏みするような視線。

逃げ場がない。

「そうそう。真島さんと久遠様。随分と、近しいご関係のようですね」

静かに言われる。
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