秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
「最近は、どこへ行くにもご一緒だと聞いております」

胸が、強く鳴る。

(もう……そこまで)

噂は、ここまで届いている。

「業務の一環です」

冷静に答えたのは、社長だった。

「必要な範囲で同行させている」

「そうですか」

玲華さんは微笑んだまま、視線を外さない。

「ですが、少々目立ちすぎているように感じましたので」

その言葉に、空気が張り詰める。

「社長という立場は、周囲の目も重要ですから」

玲華さんの言ってることは正論だ。

何も言い返せない。

「……愛果」

名前を呼ばれて、びくりとする。

「席を外せ」

低く指示される。

「……はい」

それ以上、ここにいることはできなかった。

一礼して、ドアへ向かう。

(これでいい)

本来の距離に戻るだけ。

そう思うのに――胸の奥が、どうしようもなく痛い。
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