秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
(……やっぱり)

分かっていた。自分が、どれだけ場違いな存在なのか。

「秘書はあくまで業務を遂行する立場です」

淡々と続く言葉。

「社長と常に行動を共にし、私的な距離まで踏み込むなど――」

一瞬の間。

「不適切ではありませんか?」

はっきりと言い切られる。

その一言が、深く突き刺さる。

(……違う)

そう言いたいのに、声にならない。

否定できない自分がいる。

「周囲の目もあります」

玲華の声は変わらず落ち着いている。

「すでに噂になっていることも、ご存じでしょう?」

その先の言葉を、聞くのが怖い。

「このままでは、久遠家の名にも関わります」

重く、冷たい響き。

逃げ出したいのに、足が動かない。

(もう……いい)

分かっている。

これ以上聞いても、傷つくだけだ。

それでも――
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