秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
ここで頷けば、全部が変わる。

人生も、立場も、未来も。でも――

「……そんなの」

言葉が震える。

「ずるいです」

涙が滲む。こんなふうに言われたら。

断れるわけがない。それを分かっていて、言っている。

「ずるくていい。お前を手に入れるためなら、何でもする」

その言葉に、胸が強く締めつけられる。

(……もう逃げられない)

逃げる理由も、なくなってしまった。

「……社長」

小さく名前を呼ぶ。視線が、絡む。

「俺を選べ」

低く、確信を持った声。

その一言で――心が、完全に捕まる。

私はただこの人から、目を逸らせなかった。
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