秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています

第6章 プロポーズと溺愛の完成

「聞いた?社長、婚約破棄したらしいよ」

朝、オフィスに入った瞬間だった。

ひそひそと交わされる声が、すぐに耳に入る。

「しかも相手、あの桐島グループの令嬢でしょ?」

「普通じゃあり得ないよね……」

ざわめきが、あちこちで広がっている。

(やっぱり……)

無理もない。

あれだけの家同士の話が、突然白紙になったのだから。

しかも理由は――

(私、だよね……)

胸の奥が、じわりと痛む。

視線を感じる。明らかに、昨日までとは違う。

好奇心と、憶測と、少しの敵意。

「……おはようございます」

できるだけいつも通りに挨拶をする。

けれど、返ってくる声はどこかぎこちない。

「……おはよう」

「おはようございます……」

空気が、微妙に変わっているのが分かる。
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